災害時の必要な歯科用品

2025.01.29

おしらせ一般歯科

災害時の準備は大丈夫?

こんにちは!陽だまりデンタルクリニック 院長です。
去年の1月に大きな地震が起こりましたが、一年が経過した今、もう一度「災害時の避難用品」を見直したいと思い、昨年に一度同じような内容を作成していますが、再度こういったブログ記事を作成いたしました。あのときは、突然の揺れに驚き、避難や片付けに追われてしまった方も多かったのではないでしょうか? そして落ち着いてきた頃に「非常用持ち出し袋」を揃えたものの、そのまま点検するのを忘れてはいませんか? 時間の経過とともに、消耗品の劣化や不足分が見つかることも少なくありません。特に「歯」に関するケア用品は意外に見落としがちです。

本記事では、過去の災害時の歯科支援活動で明らかになった問題点や経験談を踏まえ、「非常時にあると助かる歯科関連アイテム」や「水が不足する場面でも行える口腔ケア」を中心にご紹介します。災害はいつ起こるか分からないからこそ、今のうちに「非常用歯科グッズの見直し」をしてみませんか?


災害時に見えてきた「必要な歯科関連物資」

1. 口腔清掃用具(歯ブラシ、デンタルフロス、入れ歯清掃剤など)

地震直後の避難所では、歯ブラシやデンタルフロスといった口腔清掃用具が不足することが多いです。特に大きな揺れの後は、「命を守る行動」や「生活必需品の確保」が優先され、歯ブラシ類は後回しにされがち。避難所での生活が長引けば長引くほど、口の中の環境が悪化する可能性も高まります。
また、水道が止まってしまった状況では、少ない水の量でどれだけ口腔ケアができるかが重要になります。非常用持ち出し袋や車に備えておく「簡易歯ブラシセット」は、想像以上に心強い存在です。

2. 入れ歯関連物資(入れ歯安定剤、入れ歯洗浄剤など)

高齢者の避難者の中には、入れ歯を使用している方が多くいらっしゃいます。災害時には、十分な洗浄ができない上に、合っていない入れ歯を使い続けてしまうケースが見受けられます。合わない入れ歯だと噛みにくいだけでなく、歯ぐきへの負担で痛みを生じたり、誤嚥リスクが高まったりすることもあります。
そこで、入れ歯安定剤や入れ歯洗浄剤を非常持ち出し袋に入れておくと便利です。災害下では自宅に戻って洗浄もままならないことがあるので、携帯用の洗浄剤や入れ歯ケースがあるだけで、衛生状態を少しでも保ちやすくなります。


歯磨きシートの活用(ただし「応急処置」として)

最近は、水のいらない「歯磨きシート」や「口腔清掃用ウエットティッシュ」が市販されています。断水や水道施設の破損で歯磨きがしにくい環境下では非常に助かるアイテムですが、一方でブラシによる清掃と比べると、歯垢除去能力は低くなりがちです。あくまで“応急処置”であることを念頭に置き、

  • わずかながら水が使える場合は、歯ブラシを併用する
  • シートを使った後に、少量の水で軽くうがいをするとさらに効果的

などの工夫をおすすめします。
また、歯磨きシートは嵩張らないので、非常用持ち出し袋の中に入れておいても場所を取りません。一時しのぎではありますが、口の中の不快感やネバつきを多少でも軽減してくれます。


現場で感じた「交通手段と物資運搬」の大変さ

地震の被害が大きい地域ほど、道路の損壊・寸断が深刻で、支援物資の運搬が困難になります。もちろん歯科関連の物資も例外ではありません。災害初期の段階では、最低限の食料や医薬品が優先されることもあり、歯ブラシや洗浄剤などの到着が遅れる可能性があります。
また、歯科保健診療車(移動式の歯科診療ユニット)などを派遣する取り組みも行われていますが、道路状況によっては到着までに時間を要するケースも多いです。こうした状況を想定すると、各家庭での“自助”として、最低限必要な歯科アイテムを準備しておくことの大切さが見えてきます。


避難所での口腔ケアと「誤嚥性肺炎」のリスク

避難所では多くの人が同じ空間で生活を送るため、水道や洗面所の数が限られていることが多いです。食事も保存食や簡易食が主流となり、味付けが濃かったり、噛みにくい食材になりがち。さらにストレスからくる疲労や睡眠不足により、ついケアがおろそかになることもあります。
特に高齢者は、口腔内の清掃が十分にできない状態で食事を続けると、「誤嚥性肺炎」になるリスクが高まるといわれています。避難生活が長引くと、体力や抵抗力が低下しがちですから、口から肺へ細菌が入り込まないよう、小まめな口腔ケアが欠かせません。


災害時に「ちょっと楽になる」省エネテクニック~歯科編~

実際に避難所で過ごす場合、水が十分に使えないことが多いです。そこで、歯科の観点から「少しでも省エネで快適に過ごすためのコツ」をご紹介します。

1. ペットボトルの蓋を活用したうがい方法

給水車や支援物資でペットボトルの水が手に入ったら、最小限の量で効率よくうがいをするのがおすすめです。大きく口をゆすぎたいからと一度にたくさん使うと、すぐに水が尽きてしまいます。ここでペットボトルの蓋を使用し複数回に分けてすすぎながら、合計量を少なく抑える工夫をしてみてください。この時、できるだけ口はつけないようにしましょう。

2. ガーゼやティッシュで歯の表面を拭き取る

歯ブラシが無かったり、水がもったいないと感じる場合には、ガーゼやティッシュで歯を拭き取るだけでも違います。歯磨き粉がなくても、物理的に汚れを取り除くだけである程度は清潔を保てます。歯と歯の間はフロスがあればベストですが、ない場合は慎重に指や爪を使ってやさしく汚れを落とすようにしてください。

3. 入れ歯は「就寝前に外して」休む

災害時の避難生活では、寝る場所も確保しにくいかもしれませんが、入れ歯をつけっぱなしで眠ると歯ぐきの負担が大きく、口内環境が悪化しやすくなります。水が無い場合でも、ティッシュなどで入れ歯を軽く拭き、清潔な袋やケースに入れておくと衛生的です。可能であれば、わずかな水で簡単に洗い流したり、入れ歯洗浄剤に浸すとさらに安心です。


まとめ

昨年1月に大きな地震が起こり、あっという間に1年が経ちました。この時期は、防災や災害グッズの再点検を行う絶好のタイミングだと思います。災害時は、つい目先のこと(食料や衣類、防寒対策など)に気を取られ、歯ブラシや入れ歯洗浄剤などを見落としがちです。しかし、口腔内が不衛生なままだと体調を崩したり、誤嚥性肺炎のリスクが高まったりする可能性が出てきます。特に高齢の方や持病をお持ちの方がいるご家庭では、ほんの少しの差が健康被害を左右することもあります。

以上のポイントを踏まえ、

  • 非常用持ち出し袋に歯ブラシ(以下は余裕があれば)歯磨き粉、デンタルフロス、入れ歯安定剤、洗浄剤を入れておく
  • 水がなくても最低限使える「歯磨きシート」などを準備しておく
  • 省エネテクニックを活用して、できる範囲で清潔を保つ

これらを意識して、非常用グッズの点検・補充をしてみてください。避難所生活が長引くと疲れとストレスが溜まりやすいですから、少しでも快適に過ごせるように「お口の健康」を維持できる環境を整えることはとても大切です。

私たち歯科医師は、日常の診療だけでなく、災害時の支援でも皆さまのお役に立ちたいと考えています。「非常用歯科用品には何を入れればいいの?」「入れ歯のメンテナンスが心配」など、気になることがありましたら、いつでも陽だまりデンタルクリニックにご相談ください。今後も災害時に役立つ情報や、普段のケアに関するアドバイスを発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

以上、歯科の観点から見る“災害時の備え”についてお話ししました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さまが安心して日々を過ごせるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。

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鹿児島県鹿児島市下竜尾町3番14

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