失った歯を“もう一度”──再生医療が拓く新時代

2025.04.29

おしらせ一般歯科

こんにちは!陽だまりデンタルクリニック 院長です!
私たちの歯は、一度抜けたり抜歯したりすると二度と生えてきません。しかし近年、「失った歯を自分の体で再生する」夢のような技術が、動物実験を経てついに人への応用へと動き出しています。いわゆる“第3の歯”を生やす新薬の可能性──その最前線をご紹介します。

どうやって歯を再生するの?──USAG-1阻害が鍵

歯の再生に関わる最新研究では、「USAG-1(子宮感作関連遺伝子-1)」というたんぱく質に注目しています。USAG-1は本来、歯の芽(歯原基)の成長を抑制する働きを持っています。

  1. USAG-1をブロック
    ヒト抗USAG-1抗体(TRG035など)を投与してUSAG-1の働きを中和すると、歯の成長を抑えていた“ブレーキ”が解除されます。
  2. BMP/Wntシグナルの活性化
    USAG-1阻害により、歯の発生に必須なBMP(骨形成たんぱく質)およびWntシグナルが強化され、新たな歯原基が芽吹きます​。
  3. 動物での成功例
    マウスだけでなく、歯のパターンが人に近いフェレットでも“第3の歯”が再生。深刻な副作用は報告されていませんでした。

このように「見えない歯の種(歯原基)」を薬で刺激し、本来持っている再生力を呼び覚ますアプローチが、従来の入れ歯・インプラントとは全く異なる点です。


いまどこまで進んでいる?──臨床試験の最新状況

  • 2020年5月:京都大学発ベンチャー「トレジェムバイオファーマ」が設立。モデル動物での有効性を確認し、ヒト抗USAG-1抗体「TRG035」を最終候補に決定​。
  • 2024年9月:先天性無歯症の子どもを対象に、医師主導の治験(Phase Ⅰ相)が京都大学病院でスタート
  • 2024年10月:30~64歳の健常成人30名で、安全性を確認するPhase Ⅰ試験が国内で始まる(TRG035投与)​
  • 2025年以降:Phase Ⅱで有効性(実際に歯が生えるか)を、Phase Ⅲで大規模比較を実施予定

これらの治験が順調に進めば、早ければ2030年ごろに「先天性無歯症など特定の患者さん向け」に実用化、さらに2032~2035年には一般の成人にも適用拡大、というロードマップが見込まれています​。


新薬のメリット・注意点

ポイント内容
メリット・自分の歯として咀嚼・審美を回復
・インプラント不要
・永久歯の寿命延長
リスク・留意点・免疫反応や他組織への影響の可能性
・治験段階では費用高額
・適応は限定的(先天性無歯症など)

特に「USAG-1は他の組織成長にも関与する」ため、歯だけを再生させる投与量・タイミングの最適化が課題です。今後の臨床データで安全性プロファイルをしっかり確認する必要があります​。


患者さんはいつ利用できる?

  • 2025~2026年:Phase Ⅱ・Ⅲ試験で有効性と最適投与を確定。
  • 2027~2029年:規制当局(PMDA)への申請・審査フェーズ。
  • 2030年頃:先天性無歯症など特定疾患の治療薬として承認・実用化。
  • 2032年以降:一般成人への適用拡大、保険適用の検討開始。

科学誌Science Advancesでは「人への応用は5~10年後」との見方もあり、早ければ2030年には歯科医院で“生える歯”の選択肢が並ぶかもしれません。


まとめ:「失った歯ゼロ」の未来へ

従来の入れ歯・インプラントだけではなく、自分の細胞で歯を“もう一度”再生する時代が目前に迫っています。USAG-1阻害薬を核とした再生医療は、特に先天性無歯症の子どもたちにとって根治的な希望となるでしょう。

いかがでしたか?もしかしたら近い将来インプラントや義歯を入れなくてもしっかりと咬める時代が来るかもしれませんね。
ではでは~


参考文献・リンク

  1. トレジェムバイオファーマ:歯の芽成長阻害分子を中和、モデル動物で歯再生を確認​
  2. Kyoto University:USAG-1抗体でマウスの無歯症を改善​
  3. France 24:マウス・フェレットでの安全性と有効性確認​
  4. JStories:2030年実用化見込み、子ども治験は2025年開始​
  5. Popular Mechanics:「6年以内に人で再生」の見通し​

アクセス

ACCESS

住所

〒892-0852
鹿児島県鹿児島市下竜尾町3番14

電話番号

TEL.099-210-7836

専用駐車場あり

普通車5台

Google mapでみる
Google mapでみる