2025.07.31
歯周病
こんにちは!陽だまりデンタルクリニック 院長です。今回の記事のポイントを先に書いときます。
- 私たちは 1 日に約 1〜1.5 ℓ の唾液をのみ込み、その中には口の細菌も同乗して腸まで届く。
- 歯周病などで悪玉菌が増えると、腸内フローラまで乱れる「口腔―腸軸」の現象が観察されている。
- 全身の慢性炎症・生活習慣病・大腸がんなどとの“関連”を示す研究が増加中だが、ヒトで因果関係を証明するには今後の追試が必要。
1 日に私たちがのみ込む唾液量は およそ 1〜1.5 ℓ と言われます。歯や舌の上には数百種類、総数で 1,000 億個を超える細菌が暮らしており、その多くが唾液と一緒に 食道 → 胃 → 腸 へと旅をします。口と腸が“1.5 m のハイウェイ”でつながるこの仕組みを、近年の医学界では 「口腔―腸軸(oral-gut axis)」 と呼んでいます。
とくに注目されているのが歯周病菌の代表格 Porphyromonas gingivalis や Fusobacterium nucleatum。マウス実験では、これらの菌が腸粘膜の“隙間”をゆるめて炎症を起こしたり、大腸がん細胞の増殖を助けたりする働きが報告されています。ただし、ヒトでも同じ作用が起こるかはまだ研究途上です。
観察されている領域 | 主な知見とエビデンスの段階 |
---|---|
生活習慣病(高血圧・糖尿病など) | 歯周病が重い人ほど血中炎症マーカーが高く、メタボ率が高いという観察研究が複数。ただ“原因”か“結果”かは未確定。 |
大腸がん | F. nucleatum がヒト腫瘍組織から高頻度で検出され、進行度とも相関。がん細胞の免疫逃避を助ける仕組みが動物実験で示唆。 |
炎症性腸疾患(IBD) | マウスに P. gingivalis を経口投与すると腸炎が悪化。ヒトの IBD 患者でも口腔菌が腸から多く検出されるという報告あり。 |
メンタルヘルス | 腸内細菌が作るセロトニン前駆物質がストレス応答に関与。口腔菌経由の影響はまだ関連レベルだが、“腸―脳軸”研究が進行中。 |
いずれも 「関連が指摘されている段階」 であり、「口腔菌が直接〇〇を引き起こす」と断定できるヒトデータは十分ではありません。それでも近年の論文数は右肩上がりで、「口と腸をまとめて整えるアプローチ」に期待が集まっています。
高齢者コホートの解析では、口腔内・腸内の菌種多様性が低い人ほど、筋力や認知機能の低下が早い傾向 が観察されました。ただし「どのくらい早まるのか」を具体的な数字で示した査読論文はまだ限られています。
要するに、
「歯ぐきの腫れ」=口だけのトラブル ではなく、
口内の細菌バランス崩壊 → 腸の炎症 → 全身の慢性炎症
という“ドミノ倒し”が、高齢期の frailty(虚弱)を後押ししている可能性がある――ここまでが現在のコンセンサス です。
お口と腸は “遠い親戚” ではなく、毎日唾液という列車で行き来するご近所同士。
──こうしたサインは、「口腔―腸軸がゆらいでいますよ」という体からのメッセージ かもしれません。
現在わかっている確かなことは、
この2つはヒトでのエビデンスが豊富で、「やって損なし」のセルフケアです。
当院では最新研究のアップデートとともに、あなたの健康寿命を支えるお手伝いをいたします。
ではでは~
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